lemonの掃き溜め

日々の生活や考え事、妄想などをただ綴ってるだけ。

老いてゆく父を見て

先日、父親と二人で夕食を食べに行った。

よくあるハンバーグメインのチェーン店で、わたしと父親は同じグラム数のメニューを注文した。少食だったわたしは、幼い頃はいちばん小さいサイズでも食べきれなくて父親に残りを食べてもらっていたのに、いつの間にか同じ量を食べるようになって、それをぺろりと完食出来るようになった。それに対して、今度は父親がそのグラム数だとかなりいっぱいいっぱいだったようで、完食したのち満腹だと言って笑った。

父親は母親と違って自由な人だったし、仕事人間であるけれど母親に囚われているわたしをたまに外の世界へ連れ出してくれて、知らない世界をたくさん教えてくれた。

今のわたしの軸になるような正しさの必要性や、物事の公正な判断、現実世界の矛盾など、この世界の見方を教えてくれたのは全て父親だった。

ニュースで流れる小難しい政治や、かつてこの国を覆った戦争の話なんかを、幼いわたしにああだこうだと言って聞かせて、わたしにはその意味が分からなかったけどきっとそれは大切なことなんだろうと子供心に思い耳を傾けていた。

もちろん人間だから父親も完璧ではないし、わたしとは違う価値観の部分もあって、それはわたしの許容範囲を超えることもあった。純粋に全てを尊敬出来るとは言えないけど、父と母を選べと言われたら間違いなく父親を選ぶだろう。

食べるのにいっぱいいっぱいになった自分を嘲笑するように「俺も歳だな」と言って眉を下げる父親からは、今も昔も変わらず金マルの匂いがして、なんだか無性に悲しくなった。母親が毛嫌いするラーメン屋とか牛丼屋とか、煙草とか、ロックバンドとか、小難しい世界の話とか、今のうちにもっと聞いておくべきだな、と、そう思った。